インスリンを自在に操り、筋トレやダイエットの質を上げよう
体を動かすために必要なエネルギーといえば炭水化物。取りすぎると脂肪になり、少ないとパワーも出ず筋肉にハリがなくなります。
炭水化物をコントロールすること、つまり炭水化物が消化分解されたブドウ糖(グルコース)をきちんとコントロールすることが、筋力アップやダイエットには欠かせない知識です。
「ブドウ糖(グルコース)をコントロール」するとはどういうことか?
それはタイトルのとおり、「インスリン」というホルモンを効果的に操ることが重要となるのです。
インスリンの役割を理解する
「インスリン」というと、あまり良く知らない人がまず思いつくのは糖尿病に対するインスリン治療ではないでしょうか。もちろんこのインスリン治療に関する内容は、インスリンの働きにおいて知っておくべき重要なロジックです。
インスリンの役割は、血液中に取り込まれたブドウ糖=血糖を、筋肉を含む細胞に届けることです。そして人間の身体はこの血糖の量、血糖値を一定に保つようにできています。
食事をした時に血糖値は上昇していきますが、それに応じてインスリンも分泌され、血糖値を下げて通常の量に戻そうとします。
この時、分泌されるインスリン量が少ないなどして血糖値が下がらない状態、高血糖が続く状態を糖尿病(インスリン機能不全)といいます。
そこで糖尿病の一つの治療において、外的にインスリンを加えて血糖値を下げようというのがインスリン治療となるのです。
筋トレやダイエットに関わるインスリンの重要性
さて、それでは筋トレやダイエットにおいて「インスリン」はどのように影響して、どうコントロールすべきかひも解いていきたいと思います。血液中のブドウ糖=血糖とは、元は炭水化物や糖質で人間が動くためのエネルギーとなるものです。
炭水化物は消化されブドウ糖となり、その後血液中に取り込まれて全身に運ばれます。体内に入ったあと主に次の流れとなります。
- 筋肉の活動エネルギーとして使われる
- 新しいエネルギーがなくても、筋肉がすぐに活動できるように筋肉内に蓄えられる(筋グリコーゲン)
- 筋グリコーゲンの容量がいっぱいになると、脂肪として蓄えられる
筋トレをする際は、2の「筋グリコーゲン」がエネルギーとして使われます。そのため、筋トレ前にはしっかりと食事をして筋グリコーゲンを蓄えておくことが重要になってきます。もちろん、トレーニングに合わせて事前に食事を摂っていたり、トレーニング中に吸収の速い糖質を取っていれば、1に直結する流れとなります。
詳しくは なぜ筋トレのときに粉飴やマルトデキストリンを飲むのか
筋トレ時にこの「筋グリコーゲン」が足りなくなると、体は自分の筋肉を分解してアミノ酸(主にBranched Chain Amino Acids「BCAA」)をつくりエネルギーとします。これが世界中のトレーニーから恐れられている!笑『カタボリック』という状態です。こういう状況に陥ってしまっては本末転倒です。筋肉を分解するために筋トレをしているのですから。
よく聞くサプリメントの摂り方に「減量時にはBCAAが有効」というのは、このロジックが背景にあります。減量時などで炭水化物を抑えている時には、筋グリコーゲンが足りなくなるので、補助的にサプリメントでBCAAを摂取しようということになるのです。
ただ心配しなくても、よほどハードに追い込んだトレーニングをしない限り筋トレ中にBCAAやEAA(Essential Amino Acids:必須アミノ酸)を摂る必要はありません。ボディビルやフィジークの選手など、極限まで追い込むことが常のトレーニングでない限り、筋肉を分解してエネルギーにするということはありません。
とはいえ、よりハードにトレーニングをする人はより筋グリコーゲンの消費も早くなるので、吸収の早い糖質(マルトデキストリン)などをイントラワークアウトとしてトレーニング中に摂取するのはプラスになると思います。
全日本チャンピオンの鈴木雅さんは、多い時には15分おきにBCAAを5g、最大で30g摂ると語っています。
ちなみに私は、マルトデキストリンを溶かした水をちびちび飲みながらトレーニングしています。
それほどハードにトレーニングをしなかったり、食事で十分に筋グリコーゲンが確保できている場合は、無駄にトレーニング中にイントラワークアウトを摂らなくても良いかと思います。摂取カロリーが増えてしまうだけになってしまいますので。
個人的な感覚ではありますが、トレーニングの強度や体内のグリコーゲン状況により、体内エネルギーが足りないとどんどんドリンクを消費し、逆に体内のエネルギーが足りているとあまりドリンクに手が出ない感じです。足りないと自然に求め、十分であれば減りが少なくなります。
そして都度「カラダが欲しているのかそうでもないのか」を踏まえながら、次回のイントラワークアウトドリンクの濃さ、マルトデキストリンの量を調整しています。
これまでに摂ったことのあるイントラワークアウトドリンク
みんな大好き、エクステンドのBCAA。これに粉飴を混ぜて飲んでいたこともあります。サプリメーカのMD(マルトデキストリン)はちょっと高いので、私は粉飴を利用しています。
粉飴、マルトデキストリンの解説はこちら
エクステンド BCAAの主な成分(1スクープ約13.8g中)
- ロイシン: 3500mg
- イソロイシン: 1750mg
- バリン: 1750mg
- グルタミン: 2500mg
- ビタミンB6: 640mcg
- シトルリンマレート: 1000mg
- エレクトロライトブレンド: 1190mg
(クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム)
ON(オプティマムニュートリション)のBCAAは、BACC以外のモノは入っていないので純粋にBACCだけを摂りたい時に使えます。私はプレワークアウト的に利用していました。ロイシン:イソロイシン:バリンの比率が2:1:1のいわゆる黄金比率のBACCです。BACC以外の混ぜものがないので、臭いはキツめです。
その他にはゴールドジムのBCAAを摂っていたこともあります。こちらは香料などが入っていてとても飲みやすいのですが、コスパ的に切り替えました。
エクステンドのBCAAはマンゴーやレモンライム味などを選んでおけば間違いありませんが、自分には甘すぎたので冒険してウォーターメロン味を試したところ、スイカの皮の味に近く慣れるまで大変でした..。
BCAA
定番のエクステンドのBCAAです。
BCAA独特の臭いが強いのですが、純度の高い商品です。使用のタイミングは多岐にわたります。
鈴木雅選手も使用しているゴールドジムのBCAA、香料が入りとても飲みやすいBCAAです。
粉飴(糖質)
コストパフォーマンスに優れたマルトデキストリンです。水にもさっと溶けます。
インスリンを利用し、効果的にアミノ酸やBCAAを使う
BCAAなどのアミノ酸やタンパク質を摂取してもインスリンは分泌されますが、炭水化物(糖質)ほどではありません。そのため、よりBCAAやアミノ酸を筋肉に届けやすくするために、吸収の早い炭水化物(糖質)を一緒に摂取しインスリンの分泌を増やすように意識しています。
ただし、純粋なBCAAであればそういった狙いで炭水化物(糖質)を一緒に取る必要もありますが、エクステンドなどのようにBCAA以外にも別の成分が含まれているサプリを摂取する時は、その成分内容を必ず確認して、無駄にカロリーを摂取しないように注意しましょう。
よく「プロテインを飲む時には炭水化物も一緒に」と聞くことがあるかもしれません。これも上記のような理由から、より効率的にタンパク質を筋肉に届けるための狙いです。(またトレーニング後が最もグリコーゲンが枯渇しているためその補充をする目的もあります。)
なぜBCAAや粉飴(マルトデキストリン)を摂る必要があるのか?
なぜそのサプリメントを摂取しているのか?
消化・吸収のタイミングを考えてトレーニングのどれくらい前に摂取すればいいのか?
などの理由は、きちんと背景やその効果を知ることで自分に最適化していけるのです。
インスリンの量による弊害など
さて、では炭水化物はグリコーゲンとして筋肉に蓄えられるので多く摂っても良いのかといえば、もちろん違います。炭水化物が分解されたブドウ糖(グルコース)を大量に摂ると、インスリンもそれに合わせて大量に分泌されます。
ここで、ブドウ糖(グルコース)が多すぎて筋肉にグリコーゲンとして貯蔵できない、消費しきれない場合は、グルコースは脂肪細胞へと運ばれます。これが脂肪が増える、太る要因の一つです。
さらにインスリンが「大量に分泌される状態が継続的」になると、脂肪を蓄積する酵素(リポプロテインリパーゼ)が刺激され、より脂肪を蓄えやすい体内環境へと変化していきます。
するとインスリンは筋肉細胞よりも脂肪細胞を優先するようになり、よりグリコーゲンを脂肪へと蓄積するようになってしまうのです。
これがいわゆる太りやすい体質です。
つまり肥満気味の人が痩せるためには、まずはインスリンレベルを通常に戻し(=食べ過ぎを抑制し)、筋肉がグリコーゲンを必要とする状況(=適度な運動をしたり筋肉を付けること)が必要となってくるのです。
「食べる量を減らし運動をしろ」とは、よく一般的にダイエットをする際に言われていることですね。ただし、その背景や理由をしっかり頭に入れていることでダイエットへの身の入り方も変わってくるはすです。
筋肉量の違いによるインスリンの変化
筋細胞も脂肪細胞もインスリンの受容器官を持っていますが、インスリンはより敏感な細胞に反応します。つまり、日頃からスポーツやトレーニングをして筋肉を使ったり増やしたりしている場合は、糖は脂肪よりも筋肉に向かいやすくなります。逆に何も運動していない場合は、脂肪の受容器官のほうが敏感になり太りやすくなるということです。
まとめとして
このように、インスリンは筋肉の発達には欠かせないホルモンなのですが、同時に脂肪の蓄積も促進します。さらにインスリンが分泌されることにより、脂肪を分解する酵素の働きを弱めます。
これはごく当たり前の人間の生存本能によるものです。食べ物がなければ体内に蓄えた脂肪をエネルギーにして生きようとしますが、食べ物が十分にあればそれをエネルギーに変え、さらに余分なものは脂肪へと蓄えていくわけです。
ボディビルダーなどはこの原理を深く理解して研究し、自分の体に合ったトレーニングや減量を積んで素晴らしい体を作り上げているのです。
つまりどういうことか・・?
- 体を鍛えるには、炭水化物を多く摂って活動エネルギーを得る必要がある
- 脂肪を落とすには、炭水化物を多く摂らないほうがいい
ボディビルダーを含めたトレーニーは、この一見すると相反する事柄に、自分なりに答えを見出してカラダ作りをおこなっていると言えます。それゆえに、脂肪がなく絞られた筋骨隆々のカラダは美しいのではないでしょうか。
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