初心者から中級者向け ベンチプレス講座

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当「トレーニング種目」カテゴリでは、種目ごとの考え方やアプローチの仕方などを個人の視点で解説しています。

トレといえば「ベンチプレス」と言っても過言ではないくらい、広く一般に知られていながらも奥が深い種目です。筋トレ初心者でも、まずはベンチプレスにチャレンジしてみようと思うものです。

ベンチプレスは非トレーニーとトレーニーをつなぐ言葉

筋トレをしていると言うと、まず聞かれる言葉が「ベンチプレス何キロ?」です。これは、それだけベンチプレスが一般的な理由もありますが、逆を言うとこれくらいしか「筋トレ」に関する会話のポイントが無いということです。

トレーニー同士なら、「三角筋のリアがでかくなってますね」とか「二頭のピークがもう少し欲しい」など、具体的な会話ができますが、筋トレについて良く知らなければもちろんそういった会話はできません。例えば「私は弁護士です」という人と初めて話す時、さて一言目には何と言ったら適切でしょうか?

「ベンチプレス何キロ?」は、筋トレに興味が無いながらも何とか会話をつなげようと歩み寄ってくれている言葉です。「またその質問か」とは思わずに、しっかりとつなげる返答をしたいものです。

ちなみに、返答としては感覚的に100kgが基準で、100kgを越えてくると「スゲー!」となり、100kgに満たないと「あ、そんな感じね」という印象です。ということは、体面的にも100kgの壁は越えておきたいところですね。

それと、ベンチプレスからは外れますが「プロテインは飲んでるの?」という質問も筋トレあるあるですね。これも返答に非常に困る質問ですが、私の場合「月に4~5kg飲んでいる」と答えると多少異常な目で見てくれます笑。

ベンチプレスの目標重量

さて、話をベンチプレスのやり方、諸中級者向け講座に戻しまして。

ベンチプレスをやり始めてまず目標となるのは、バーに20kg×2枚のプレートを付けた60kgではないでしょうか。見た目にもバランスが良く、ここがベンチプレスのスタート地点に感じます。

どこで目にしたのか忘れてしまったのですが、「ベンチプレスは最低でも体重の1.5倍は上げられる」という記事の覚えがあり、私は目標として取りあえず(当時70kg弱の)体重の1.5倍、105kgはとにかく上げられるようにしたいとベンチプレスに励んでいました。

15年以上も前で、知識も情報も乏しい(という言い訳をして..)中で、目標達成には4~5年もかかってしまいました。今の知識があれば、「ベンチプレス100kg」という目標なら、仮に初心者から始めたとしておそらく1年で、長くても2年以内には達成できると思います。ぜひ正しい知識と進め方をもって取り組んでいただきたいと思います。

初めて~初心者向けのベンチプレスのやり方

ベンチプレスに限らないのですが、初心者がまず身につけたいのは神経系の順応です。こう書くとよく分からないと思いますが、いわゆる「慣れ」を体に染み込ませることです。何らかの運動競技でも肉体作業でも、初めての場合は要領が上手くいかないものですが、慣れてくるとある程度自然に体が動くものです。

ベンチプレスは、一見すると単に胸の上でバーの上げ下げをしているだけですが、作用している筋肉は多岐にわたります。まずは適切に挙動ができる下地、慣れるまでは重量を上げずにトレーニングしてください。目安としてはバーがフラフラせずに、しかっり「自分でバーベルをコントロールしている」という感覚が身につくまでは重量を上げずに続けて欲しいです。

それと、この「慣れ」に密接に関係するのですが、フォームは最初の時点で「慣れ」と平行して固まってきます。つまり、最初に間違ったフォームで慣れてしまうと、あとで修正するのが難しくなります。基本となる姿勢、フォームは必ず正しいやり方で行うよう心がけてください。

とは言え、初心者のころにあれもこれもとなると逆にバランスが崩れてしまいます。まずは、これだけ守っていればという3つのポイントを挙げますので、最低限注意してみてください。もちろんそれ以上に意識できるようなら、どんどんフォームの改善をして良いと思います。

ベンチプレス初心者が最低限注意する3つのポイント

実はこの3つのポイントは、初歩的な内容なのですが初心者にはどれも本当に難しいものです。将来の自分自身のためにも、まっすぐ成長していくためにもとにかく慣れるまで続けてみてください。

肩甲骨を寄せて下げ、ブリッジをつくる

口で言われても一番意味が分からない内容ではないでしょうか。筋肉をより効果的に刺激するには、筋肉の伸縮の幅を最大限にする必要があります。ベンチプレスは大胸筋を鍛える種目ですが、この大胸筋の伸縮が最大限となるように挙動することが重要となるのです。

例えば、通常の何もしない状態(肩甲骨がフラットな状態)で片腕でベンチプレスの動作、拳を前後させる動作をしてみてください。そして、逆の手で大胸筋を触ってみると、ほとんど動きが無いことがわかります。どちらかと言うと、肩が大きく前後しているのではないでしょうか?

では次に肩甲骨を寄せてみると、自然に胸が張った状態になります。そこからさらに肩甲骨を下げてみると、「グッ」と大胸筋が張る感じがしないでしょうか。この状態で先ほどと同じように拳を前後させて、大胸筋を触ってみてください。かなり筋肉の収縮を感じられると思います。この時、絶対に肩甲骨は固定したまま動かさないようにしてください。

さらにできれば、拳や腕を前後させるというイメージではなく、大胸筋を伸ばす縮めるというイメージでこの動作を行なってみてください。目をつぶってやると意識しやすいです。これは、実際にバーベルを持って重さを感じると難しいので、より慣れてきたらでも構いません。

大胸筋の中部を収縮させるイメージで。

バーは親指を回して握り込む。その際、手首が倒れないように

バーの握りは、親指を回して握り込むよう(サムアラウンドグリップ)にしましょう。その際、親指側の方に力を入れでギュッと握る感じにしてください。これはバーの落下事故を防ぐためと、胸への刺激がより大きくなるためです。グリップの手幅は肩幅から120%程度の位置あたりで、一番力が出やすい場所を探ってください。

実は私は、長らく掌底の上にバーを乗せる方法(サムレスグリップ)でベンチプレスをおこなってきました。重量が上がってくると気づくのですが、どんどん不安定になりなかなか重さを追うのが厳しくなるのです。そこで途中から親指で握り込むサムアラウンドグリップに変更したのですが、この変化に慣れるまでに本当に時間がかかりました。

バーの握りをもう少し細かく説明しますと、実際に握ってみると分かるのですが、バーに対して腕がまっすぐの状態で握るといまいち安定しないと思います。また、しかっり手首を立てて、腕の延長線上にバーが均等に乗っていないとすぐに手首を痛めます。

バーを安定して握るためには、腕を若干内側にひねり、突き出した拳は自分から見て逆ハの字になるようにします。そして親指側でギュッと握ります。これが慣れてくると、グッと握らずとも親指側に意識を集中させて挙動することができるようになります。

ケガ予防にグローブなどのギアの利用をお勧めします。

お尻を上げたり胸でバウンドさせるなど、反動を使わない

人間の本能として、体を使って何かモノを動かそうとする場合、最も効率の良い筋肉の使い方や負担のかからない使い方を選択するものです。そのため、ベンチプレスに限ったことではないのですが、初心者のうちはバーベルを挙げようとする時に、大胸筋以外の大きな筋肉や反動を無意識に使ってしまいます。

まず大切なのは、狙っている筋肉だけをしっかり意識することです。また、無意識に反動や煽り上げを使っている場合は、扱っているウエイトが重すぎる場合がほとんどです。

反動や煽り上げを使った挙動でクセが付いてしまうと、本当に修正するのが難しくなります。反動や煽り上げはチートを指すこともありますが、自分の本来の適正重量以上のウエイトを物理上は挙げることができます。ただしチートは意識して行う上級者向けのテクニックと覚えてください。初心者のうちは基本に忠実に進めましょう。

あとで間違ったフォームを修正しようとした時、反動や煽り上げを止めると今まで扱っていたウエイトはまず挙がらなくなります。すると心理的に「扱う重量が減るのはイヤだ」となり、結局ウエイトを優先してしまうことが多くなります。そうなると、いつまで経ってもきちんと狙った筋肉にダイレクトに効かせられない状態が続くのです。

なので、初心者のころから正しいフォームできちんと固定し、そのフォームで慣れることが重要となります。


以上を踏まえた上で、お手本となるBodybuilding.comの「ベンチプレスのやり方」を見てください。ウエイトがそれなりにあるので、若干ストリクト(厳密な挙動)ではない箇所もありますが、とても参考になります。

中級者向けベンチプレスのやり方

中級者の方へ。まずは「中級者の定義」といたしましては、上記の初心者向けの内容をすでに卒業している方。ベンチプレスの重量は自分の体重は超えて、100kgを目標としている方という感じでしょうか。

最初のころ重量がどんどん伸びる理由

筋量を増やしていくには、やはり重量を増やしていくことが重要ですが、伸び悩むのもこの時期かと思います。 初心者の頃から始めて、慣れてくるとどんどん重量は伸びてきます。これは筋量ももちろんアップしてのことですが、それよりも本来出せる力に神経系が追いついたという要素が大きいのです。

つまり、最初からそれだけ挙げられる筋肉を持っていて、慣れることによりその上限に近づいたということです。その神経系の「慣れ」というスピードが早く、どんどん重量が伸びるという結果につながるのです。

そして慣れきったところ、ここからが本当の筋トレの勝負となります。これ以上は筋量を上げていかないと、ベンチプレスの重量も上がりません。筋量というのは急激に増えるものではありませんので、ここが大きく伸び悩む最初の壁と言えるのではないでしょうか。

ベンチプレスの重量を上げるには

筋量を増やしていくには、前回よりも強い負荷を対象の筋肉に与え、そして成長に十分な栄養と休息を取ることが基本です。とは言え、最初はこのロジックがなかなかピンと来ないかもしれません。

そこで、単純に2点だけポイントをまとめてみたいと思います。

チェストプレスマシンでより強い負荷を与える

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ある程度の重量になってくると、ベンチプレスで新重量の挑戦をするのはなかなか難しく、怖い部分も大きくなります。そこで、まずはチェストプレスマシンを使って、安全により限界に近い重量で大胸筋を刺激し発達を狙います。

マシンを使う場合、プレスの挙動がスタートになることが多いと思います。限界の重量だと最初から挙がらないこともあるかもしれませんので、そういった場合は引き上げだけサポートをお願いしましょう。足で補助するタイプのマシンもありますが、そういったマシンだとさらに自分で補助をしながら追い込めますので重宝します。

それと、一点注意しなければならないのは、例えばベンチプレスで80kg挙がるといって、同じ基準でマシンの重量設定をしないことです。マシンはメーカーごとに実際にかかる負荷が変わってきますので、マシンの重量で80kgといってもかかる負荷は変わることが多いです。

マシンは重量で設定するのではなく、あくまで自分の今の力の限界を出し切る狙いで利用しましょう。つまり、回数は8回~10回程度を目指しどんどん重量を伸ばしていけるようにしてみましょう。

食事の量を増やしてみる

増量期のように大幅に食事量を増やすのではなく、普段の食事でご飯の量を倍にするなど、炭水化物を中心に量を増やしてみてください。
増量期に関する解説はこちら

タンパク質ももちろん大事ですが、この時期はどちらかと言うとパワーの源となる炭水化物を多く摂ることで、力を出し切り良い結果に繋がることが多いかと思います。できれば、トレーニング前の食事は意識して炭水化物を多く摂れれば尚良いです。
炭水化物が力につながるロジック(インスリンの役割)