体をデカくするための増量期 なぜ必要? リーンバルクでいいのでは

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肉を効率よく大きくする、バルクを増やすにはやはり増量期を設けることが一番の近道です。理想としては、脂肪を減らしながら(もしくは維持しながら)筋肉だけを増やしていく、いわゆるリーンバルクを目指したいところですが、挑戦した方ならよく分かると思いますが、これが非常に難しい。難しいというか、実際は不可能ではと感じてしまうほどです。

なぜ増量期を設ける必要があるのか

筋肉を大きくするには「プロテイン」、タンパク質が重要となりますが、もちろんタンパク質を摂っているだけでは大きくなりません。タンパク質が分解されたアミノ酸を筋肉に届けたり、そもそも筋肉を動かすためのエネルギーとして炭水化物が必要ですし、脂質も人体には欠かせない栄養素です。

リーンバルクを実現するためには、筋肉が成長するために必要最大限の「タンパク質」、そして必要最低限にして最大の効果を生むだけの「炭水化物」「脂質」が必要となります。もちろんこれらの栄養素に加えて、ビタミンやミネラルなどの要素も欠かせません。これらを、1日の消費カロリーを超えることなくバランスよく摂って初めてリーンバルクが成立します。

実際リーンバルクを目指そうとすると、まず扱える重量が増えません。すると自ずと筋肉量も増えません。これは主に炭水化物(グリコーゲン)が足りず、エネルギー不足の中でトレーニングを行うためで、場合によってはカタボリックに陥ることもあります。(このような理由から、減量中のトレーニングではBCAAやカーボを多めに摂る必要があります)

それだけリーンバルクは難しく、よほどの栄養管理ができない限り困難なものなのです。そこで、これらの細かい栄養管理をとっぱらい、「各栄養素の必要最低ラインを大きく越えて、かつ1日の消費カロリーも大きく越え、最大公約数的に栄養を摂る」というのがいわゆる増量期なのです。

これであれば、気にするのは各栄養素をバランスよく摂りつつ、とにかく食べればいいという生活をするだけなので、あとは筋トレと休息をしっかり取っていれば自然とカラダは大きくなっていきます。とても重要なので繰り返しますが、「バランス良く大食いし、そこに筋トレと休息が加われば必ず体は大きくなります」

とは言うものの、実はこの「とにかく食べる」が非常にキツイのです。例えばボディビルやフィジークのトップ選手で、増量期には1日に6,000kcal~10,00kcalを目安に食事をします。私は5,000kcalを目標にしていましたが、本当に食べることがキツイす。

しかも、私は増量中でもなるべく脂質を摂らないようにしていたので、なかなかカロリーが稼げません。(※脂質は意図しなくとも必要十分量は摂れるので、あえてカロリー稼ぎに使っていないということです)

それでは、実際の増量期にはどのような食事を摂っていたか一例を挙げてみたいと思います。

5,000kcalの目安(実際のフル食の例)

朝食(910kcal)

  • 野菜ジュース: 約80kcal
  • アーモンド10粒: 約60kcal
  • 食パン2切れ + ハチミツ: 約450kcal
  • プロテイン40g(牛乳200ml): 約320kcal

昼食(1,690kcal)

  • スパゲティ200g(ミートソース): 約1,100kcal
  • スクランブルエッグ(卵3個): 約270kcal
  • プロテイン40g(牛乳200ml): 約320kcal

間食(470kcal)

  • プロテイン40g(牛乳200ml): 約320kcal
  • 煎餅やあられ、チョコレートやビスケットなど: 約150kcal

夕食(1,740kcal)

  • 鶏胸肉350g: 約600kcal
  • ご飯500g(約1.5合): 約840kcal
  • その他副食: 約300kcal

夜食

  • プロテイン40g(牛乳200ml): 約320kcal

合計で約5,130kcal、これに毎食ごとにフィッシュオイルを20kcal*3回、筋トレの日はさらにアミノ酸やBCAA、マルトデキストリン(糖質)、そして大福や団子も食べます。

もう少し分割して、1回の量を減らしたほうがいいのかもしれませんが、家族と食事を一緒にしているとなかなかタイミングをずらすことも難しくなります。

常に満腹状態は想像以上に苦しい

さて、増量時に「とにかく食べる」必要があるのですが、これの何がキツイかと言うと常に満腹状態だということです。つまり、基本的にお腹が減ることはありませんし、食事をおいしくいただくという意識も低くなります。

とにかく量を詰め込む、食べられるだけ胃の中に入れると意識です。こうなると、結婚している人は、料理を作ってくれる奥さんに大変失礼な状況となってしまいます。やはり、カラダを大きくするために家庭をないがしろにしてはいけませんので、満腹状態でも常に「おいしい」と言って食べなければいけません。些細なことに聞こえるかもしれませんが、非常に重要なことです。

増量をしたことがない人が、いきなり最初から1日に5,000kcalを食べられるかと言ったらそれはまた厳しいかと思います。最初はどんなに頑張っても、胃におさまる以上の量は食べられません。

徐々に食べる量を増やしていき、胃もどんどん大きくしより活動的に鍛えていきます。「食べることも筋トレ」とは良く耳にしますが、本当にそう感じます。

ここで勘のいい方は気付くかもしれませんが、できるだけかさばった量を摂らずに効果的にカロリーを上げる、カロリーや必要栄養素に関係のないものは極力避けるということが非常に効果的となります。例えば野菜はかさばって量(体積)を取りますが、摂取できる栄養素は主にビタミンやミネラルです。

これらは全てサプリメントに置き換えてしまえば、極論を言うとかさばる野菜は食べなくてもOKとなります。(とはいえ、もちろん野菜を一切食べないということはお勧めしません)

イメージとしてはダイエットと逆のことをする感じですね。他にもカロリーを稼ぎつつ、必須栄養も十分に摂れる食べものがありますので、簡単に紹介してみたいと思います。

増量期に重宝する食べものたち

増量期に重宝する食べものとは、私の考えの中では、かさばらずに必要な栄養を簡単に摂れるものです。基本的に増量期の食事は「作業」になりますので(減量期もですが・・)、とにかく時間をかけずに簡単に済むものが望ましくなります。

究極は未来を想像した映画でよく描かれるような、サプリメントだけですませる食事かもしれませんが、今のところそういった世界にはなっていません。

ということで、手軽に栄養を補給しながら、時間もかからない食材を自分なりに探すしかなくなります。私がこれまでに増量期で重宝した食べものを何点かご紹介します。

1. 牛乳

増量期では、プロテインを溶かす際の水を牛乳に変えます。1回200mlで約140kcalをプラスできますので、4回で560kcalもカロリーを稼ぐことができます。しかも、タンパク質も1回に約7g、4回で28gも摂取することができます。脂質を含んでいるので腹持ちが良くなり、お腹がなかなか減らないという副産物もあります..。

デメリットは脂質が多いことなので、やはり通常の食事では脂質は余分に摂らないようにしています。それと若干お腹がユルクなりがちになることです。冷えた牛乳を一気に飲まないように気をつけましょう。

2. 卵

卵は普段のタンパク質補給から、減量期の食事としても多く使われますが、増量期でもとても重宝します。卵1個で約90kcal、1日に3~5個程度消費しますので平均で300kcla以上は稼げます。こちらもタンパク質が豊富なので、平均で1日に30gは摂取することができます。

デメリットはこちらも脂質が多いことなので、やはり他の脂質は控えめにしたほうが良いと思います。

3. ご飯のおとも

これは、タラコや明太子、海苔の佃煮やお新香など、とにかくご飯が進むのに役立てば何でもOKです。白米でカロリーを稼ぐために、とにかく食が進むようなアイテムは非常に役立ちます。

4. 混ぜるだけのスパゲティソース

食のレパートリーが無くなった時に重宝します。スパゲティ2人前(200g)を茹でて、最後に混ぜるだけでそれなりにおいしいスパゲティ料理になります。スパゲティ2人前で約800kcalはカロリーが稼げるので、よく取り入れていました。

5.玄米フレーク

牛乳で溶かしたプロテインを、さらに玄米フレークにかけて食べます。これで1回あたり約200kcalを稼ぐことができます。この組み合わせはとても美味しいので、普通におすすめできます。また、玄米フレークに含まれる適度な炭水化物を一緒に摂ることもできるので、栄養の吸収面でもおすすめする組み合わせです。減りが早いので、コスパを考えて6袋セットがおすすめです。

(番外)すきやのメガ盛り

ご飯が並の2倍、お肉が並の3倍というメガ盛り、カロリーは実に1,400kcalです。これでお値段が780円と非常にコスパもいいです。食べるネタに困ったらぜひ取り入れてみてください。デメリットとしては、最後のほうはやはり飽きてくることですね。

増量期には切り替えが必要な「トイレ事情」

増量期は、基本的に消化が追いつかない状態が続きます。その為、便はきちんと消化されずに出てくる軟便も多くなります。せっかく頑張って食べても、きちんと栄養を吸収できなければ意味がありません。トレーニーの中には食事と一緒に消化剤を飲む人もいます。苦しい思いをして量を食べても、きちんと消化されて栄養が吸収されなければ何の意味もないからです。いきなり大量に食べるのではなく、徐々に許容量を増やしていくようにしましょう。

レビューにはトレーニーの姿もチラホラ、やはり消化剤の利用者は多いのです。

さて、胃は大きくなって詰め込める量が増えたとしても、その後の消化器官などでも処理できる収められる量にはリミットがあります。つまり、入れたら出すを効果的に繰り返さないと、入れることがとてもキツくなります。

私の例がどれだけ一般的かは分からないのですが、私の場合は食べたら必ず出すの繰り返しで、1日に4~5回は大きいほうをしていました。それくらい頻繁に出さないと食べることができないということもありますが、ごく自然に食べたらトイレに行く習慣ができています。常にお腹の中は満タン状態で入れたら自然と押し出される状態ですね。

これで便秘にでもなったらかなり危険だなと常に考えていましたが、やはり消化が追いつかない傾向にあるためか、便秘になることは一切ありませんでした。ただ、消化がされていないような軟便になるのもよろしくないので、消化の良い食べ物を選んだり、時間を詰めすぎないようには気をつけています。

では増量時にどれだけ体重が増えるか

毎日5,000kcalを目指して食べると、一体どのくらい体重が増えるのか? 私の過去2回分の実際の数値を紹介いたしますと、

  1. 3ヵ月間: 68kg→78kg(10kg増)
  2. 2ヵ月間: 73kg→80kg(7kg増)

くらいです。まず、筋肉があるので基礎代謝が高いためカロリー消費も多くなります。それに筋トレは週3回ですがけっこうハードに行いますので、ここでもそれなりに消費します。そのため、苦しい思いをして食べた割にはこの程度しか増えません。

体重自体はソコソコ増えますが、感覚的にこのうちの1kgは便(腸内滞留物)の分だと思います笑。つまり、純粋な体重増としては1ヶ月に4kg程度、除脂肪体重でいうと約3.2kg、そのうち筋肉の増加でいうと多くても1ヵ月に1~1.5kg増というところでしょうか。

本当は増量期はもう少し長い期間にしたほうが良いかもしれませんが、ヘタレなので3ヵ月がやっとです。私の場合、重量で伸び悩んだ時にスポット的に増量期を設けるという感じです。

ちなみにベンチプレスの記録がどれだけ伸びたかも紹介しますと、

  • 1の時は100kg 3reps→120kg 5reps
  • 2の時は120kg 5reps→130kg 8reps

やはり、炭水化物を十分に摂っていてエネルギーがみなぎっている時は重量も上げられます。

増量期はキツイ、もしかすると減量のほうがラク?

増量期に食べてばかりいると、「食べるのツライ・・、これなら減量のほうがラクかも」と感じる瞬間が何度もあります。が、減量時はやはり逆の思考になります笑。

増量期は「筋量」が増えていくことがモチベーションに、減量期は「脂肪」が減っていくことがモチベーションに。どちらに対する情熱が強いかで、取り組む気持ちも変わってくるとは思いますが、やはり身体的にも精神的にもどちらもキツイ。

トップビルダー、フィジーカーは常にこの増量と減量、オンとオフの繰り返しですが、自分にはツラすぎてとても真似ができません。

ただ、いわゆるダイエット的な減量ということであれば、気持ちはとてもラクです。体脂肪率でいえば、18%程度から12%くらいに減量する(脂肪を4~5kg程度落とす)のであれば、基本的に食事制限だけで2~3ヵ月もあれば落とせます。もちろんある程度の筋量があって代謝がともなっての状態が必要となりまが。

なので、ダイエットをするなら、まずは筋トレをした方が良いとなるのですね。

キツイのはそこから先の、体脂肪率でいえば一桁台を目指す時となります。やはり大会などに出場する時は、筋肉の大きさもそうですが、筋肉ひとつひとつのカットの見栄えを良くしないといけません。それには脂肪を可能な限り落とす必要があるからです。